明後日は彼女が俺ん家に来る。それがただ来るだけなら、俺は今こうやって汗ばんだ手を震わせてはいないだろう。その日は両親が結婚記念日だとかで旅行に行くらしい。一馬も行くか?と言われたが、せっかくだから二人で行けよ、と返事を返した。実際この話をされたとき、ヤるならこの日しかねえ!と心の中でガッツポーズをした。学生、しかも初めてな俺たちにはラブホテルなんてものは難易度が高すぎる。今からヤりますよ!と言っているようなものじゃないか。そんなの羞恥プレイもいいとこだ。
「なあ、今度の金曜日俺ん家こねえ?」
「行くー!ウイイレしよ!私結人と修業したんだ!」
「いや…泊まりでだけどいいか?(つーかいつ結人と会ってんだよっ)」
「…は?まじで?」
「おう」
シレっと返事をする。だけど、だけどだ。俺の心臓は破裂しそうなくらいにばくばくと音を立てている。ヘタレ返上だと自分に言い聞かせて笑顔を浮かべる。
「(なんで一馬ニヤニヤしてんだろ…)うん、わかった!何時に行けばいい?」
「え、おえあ!」
「は?」
思わず出た俺の声に、はあきれたような声を出した。ついでに馬鹿かこいつ、みたいな目で俺を見る。
そんな目で見るな。自分が可哀想で涙が出そうになるだろ!
「いや、とりあえず17時くらいに迎え行くわ」
「分かった」
そう電話で約束したのはついさっきの事だ。そして俺はすぐさま英士に電話を掛けて家に来てもらった。めんどくさいと言われたが電話越しに何度も頭を下げているとため息とともに分かった、と了承の返事を貰えた。
「ふーん。よくさんの親が許してくれたね」
「(そこかよ)ちゃんと挨拶にも行ってるからな。との電話の時にお母さんにも変わってもらってお許しもらったんだぜ」
その時おばさんには変な事しないって信じてるわよ、と言われた。それは俺の心の中に留めておいて、大丈夫です!と返事をした。…おばさん、すみません。俺は初めておばさんとの約束を破ってしまいます。頑張ります。
「ふーん」
「ふーんって!お前さっきからそればっかりじゃねえか!」
「え?自慢する為に呼んだんじゃないの?」
「ちっげえよ!どうやってさ、その…ほら」
「ああ…ヤるかってこと?」
「そんなダイレクトに言うなよ!」
「はあ…うるさいな。で?なに?」
「いや…おう、まあそういうことなんだけど」
「そんなのね、きっと俺がここで助言しても、一馬はつっぱしちゃうから無駄だよ」
「そんな事言うなよ!ちゃんと頑張るから!」
そういうと英士は呆れたようにため息を吐いた。
「あのね、俺に言われた通りしたってさんは喜ばないよ?大事なのは二人の気持ちでしょ」
「まあ、そうだな」
俺は英士に言われてハッとした。確かに俺もが他の子が言ったことをしてくれるよりも、自分の為に一生懸命なにかをしたり考えてくれる方が嬉しい。
「今ここで一馬がさんを喜ばせたいって悩んでる気持ちがさんは嬉しいはずだよ」
「ああ、そうだな。俺舞い上がって大事な事忘れてた」
「まあ頑張りなよ」
「はあ…お前はいっつも余裕だな」
「何言ってんの。彼女の前じゃ余裕なんてないに決まってるでしょ」
と、英士らしくない言葉に俺は驚く。俺の気持ちを見透かしたのか、英士は失礼な奴だねと目を細めた。
「悪ぃ」
「本気で好きだからこそでしょ、お互いにね」
と、またしても英士らしくない言葉が出る。今度も英士は俺の気持ちを見透かしたかのように、うざいんだけどと呟くように言った。
「じゃ、俺彼女ん家行くから」
「おう。ありがとな」
「あ、これ。ちゃんとするんだよ」
英士はそう言うと駅前の薬局の袋を渡してきた。サッカーの帰りに寄るとこのものだからすぐに分かった。俺はなんだろうかと思いながら袋の中を見る。それは紙袋に包まれていた。俺はそれを取り出す。
「じゃ、またね。なにかあったら電話して」
「お、おう!じゃあな!」
俺がそれを開けようとしたとき、英士はそういって鞄を肩にかけて部屋を出ていった。英士がいなくなった部屋でそれを紙袋から出す。
「え、英士ー!」
それを見た俺は慌てて部屋を出ていった英士を追いかける。俺が階段を降りるときにお邪魔しました、という英士の声が聞こえた。俺は急いで階段を降りて玄関に置いてあったサンダルを履いて家を出る。
「英士ー!」
英士の後ろ姿を見つけてそう叫ぶと、英士は一度振り向いて手を挙げてまた歩き出した。
そして携帯のバイブが鳴ってそれを見ると英士からだった。ただ一言、避妊は大事だよ、とそこには書かれていた。俺は耳まで赤くなるのを感じながらお節介な友人に感謝と恥ずかしさを覚えた。
そしてその二時間後にさっき言い忘れたけど、大きい声は近所迷惑だよとメールが着た。うるせえよ!
決戦は二日後「だからってあれはねえよ」「いい友達でしょ、俺」「はあ…」
あとがき
一馬と英士の裏話。避妊はだいz(ry
2013年2月19日
一馬と英士の裏話。避妊はだいz(ry
2013年2月19日