なあ、今度あの子も連れて来いよ、そう言ったのは結人だった。



日陰に咲く花
クリスマスの約束。




毎年クリスマスは、結人の家で一馬と三人で集まる。それはいつからか毎年恒例の行事になっていた。三人でサッカーゲームをしたり、飽きてくると野球ゲームに走ってみたり、懐かしいファミコンを引っ張り出してみたり(ファミコン自体が古いからデータが飛んで終わりになるけど)。
またその季節が近づいてきたある日結人が言った。あの子、ほらなんだっけ…ちゃん?あの子も呼ぼうぜー、と。なんで?と聞くと、年ごろの男子が三人だけで集まってもキモイだろー!と言われた。まあ確かにそれは去年頃から思っていた。だけど結人の女友達は俺も一馬もうるさくて苦手だし、俺と一馬は特定の女子と仲良くすることがない。だから誰も女子を呼ぼうとは言わなかった。たださんに関しては珍しく一馬も苦手と思わなかったみたいで、一馬はそれに対してあの子にも予定があるだろ。まずは聞かねえと、と肯定の言葉を出した。俺はなぜか複雑な気持ちになりながらも聞いてみる、と返事を返した。
そして二人と別れて家に帰り携帯を開いてメール画面を出す。それから10分の時間が経った。何度も本文を消したり書いたりを繰り返している最中だ。クリスマスと言えば世の中では好きあっている男女が一緒に過ごす日だ。もしかするとさんにもそういう相手がいるかもしれない。そう思うと今までにないくらい本文を打つ手が進まなかった。
結局25日なんだけど、予定あいてる?とごく普通のメールを送った。今まで何を悩んでたんだ、と自分でも送信画面を見て思った。
しばらくして彼女から空いてるよと返事が来た。俺は小さく息を吐いた。さっきまでの緊張感は嘘のように飛んでいた。そしてすぐに返事を返す。
『この前会った奴ら覚えてる?』
『えーっと、若菜君と真田君でしたかね?』
『そう。毎年あいつらとクリスマス会うんだけど、さんもどう?』
『私もいいの!?みなさんがいいならぜひ!』
今まで記号や絵文字の入ったメールはほとんどなかったのに、そのメールの最後には笑顔の顔文字が入っていた。なんとなくそれを見てイライラした。あいつらと会うのが嬉しいのか?そんな馬鹿な事が頭に過ぎって、そしてそんな馬鹿な事を思う自分に驚きながらまた時間とか決まったら連絡するから、とメールを返した。



数日後、アンダー14の練習が終わって三人でマックに寄った。それぞれ注文を済ませテーブル席に座る。結人が頼んだ照り焼きバーガーをあちっ!と言いながら頬張る。

「で?ちゃんどーって?」

「大丈夫らしいよ。それより食べてから喋ってよ、汚いでしょ」

結人の向かいに座る一馬がなんか飛んだぞ!と声を荒げている。結人はわりぃわりぃと笑って誤魔化していた。

「んじゃ、16時に俺んち集合な!あ、さすがに泊めるのは出来ねえだろうし英士送れよ!」

「当たり前でしょ」

「にしし、楽しみだな!」

そう言うと結人はまた照り焼きバーガーにかぶりついた。俺はホットコーヒーに口をつける。

「なあ英士」

散々結人につば飛ばすなって!と怒鳴っていた一馬が諦めたように俺に視線を向けた。

「なに?」

「やっぱさ、クリスマスプレゼントっていうの買った方がいいのか?」

「は?なにいきなり」

「だから!さんだよ!」

一馬は恥ずかしそうにそう言った。耳まで赤くなってるよ、とはあえて言わなかった。だけどそれを見て結人が笑いながら言った。一馬はうるせえ!と丁寧に返事を返す。だからお前はいじられるんだよ、というのもあえて言わなかった。

「別にいいんじゃないの。どっちでも」

「ええ!?英士それねえぞ!ちゃんとお前は買えよ!」

照り焼きバーガーを食べ終わって今度はチーズバーガーを口に頬張っている結人が驚いたように声を上げた。汚いって言ってるでしょ、と言ってみたけど結人はいやいや、お前買えよ!と話を元に戻した。

「そういうのって面倒臭いでしょ」

「はあ…。お前ってなんつーか…もう」

結人はそういうと髪の毛を大げさにかいた。

「せっかくのクリスマスなんだしさ、そんくらいしてやれよ。プレゼントってもらったら嬉しいじゃん」

「分かった分かった。考えとくよ」

俺は面倒臭くなってそう返事を返した。一馬は俺たちの会話を聞いて結人になにがいいんだろうか?と相談をしていた。結人はお前はなんでもいいんじゃね?と適当に返事を返していたけど、一馬は不服そうに文句を言っていた。



当たり前のように隣で笑ってくれる彼女の優しさに俺はずっとずっと甘えていた。それはこの先もずっとずっとそうで、俺は何度も何度も彼女を傷付けてきた。それでも彼女の優しい笑みはずっと変わらなかった。
あとがき。
もうそろそろで高校生編に突入したい(願望)
2013年1月30日