ただあの頃の私は人の関係が大きく変わるなんて事、知らなかった。



日陰に咲く花
2人、歩くその道。




英士とが若菜の家に着き部屋に入ると、真田と若菜が格闘ゲームをしていた。真田は時折おう!あぁ!と声をあげ、若菜は常に声をあげながら体を揺らしていた。それを見たは嬉しそうに、ただ楽しそうに笑っていた。英士はそんなを見ながらまた自然と笑みがこぼれた。
二人がその一戦を終えると、今度はまた四人で大富豪を始めたりババ抜きをしてみたり、そうして時間は過ぎて行った。はトランプゲームで負けて、悔しそうにしながらも、やっぱりどこか嬉しそうな顔をしていた。
時間は確実に流れていき、時計の長針が九時を回った時、はそろそろ帰るね、と声をかけた。

「お、もうこんな時間か」

「俺送るよ」

若菜が部屋にある時計に目を向けてそう言うと、英士は立ち上がりハンガーにかけていたコートに腕を通す。はいいの?と声を掛けるが、英士は当たり前でしょ、と答えた。

「えいしー、送り狼になんなよー?」

若菜が茶化すように声をかけると、英士はさあね、とすました顔で答えた。はよく意味が分からない様子で、それでもやっぱり笑顔でありがとう、と英士に言う。それに対して英士は苦笑いを浮かべ、真田は飲んでいた林檎ジュースを噴き出しそうになり、若菜は声を出して笑った。

「また来年もみんなで集まろうなー!」

玄関まで見送る若菜と真田。まずは若菜がそう声をかける。それに続いて真田もそれも悪くねえな、と言った。

「はい、是非!」

来年もきっとこうして皆で笑っていられるよね、純粋にはそう思った。時間が流れていくように、季節が過ぎていくように、人も少しずつ、でも確実に変わることを、まだ知らなかった。安定した関係が壊れたり、違う形に変わることを。それが当たり前の事だと気付くのは、きっともっと色んな傷を負って、人の優しさに触れて、時には悔しい思いをして、でも誰かに甘えられて、そして年を重ねた時なのだろう。



街灯が暗い夜道を照らす。二人が歩いていると空から雪が降り始めた。は雪だねーと、立ち止まり空を見上げる。英士もそれに気付いて立ち止まる。

「郭君、受験、頑張りましょうね」

「いきなりどうしたの?」

「一緒の高校に通えたら嬉しいなって…そう思ったから」

はまだ空を見上げていた。寒さのせいか、それとも他のなにかのせいなのか、の頬が赤く染まっていた。

「俺も、俺もそう思ってるよ」

英士のその言葉を聞いて、は視線を英士の顔にやった。はただ嬉しそうに穏やかな笑みを浮かべていた。

「じゃあ、私頑張んなくちゃですね」



桜の花が舞う季節、きっとその時も横で笑っていられますように。
あとがき。
1年以上パソコンに眠っておりました…
2015年1月14日